宅建業の取引において、宅建業者以外はいわば素人のお客さんであるケースが多く、悪質な宅建業者と取引をした場合、知らず知らずに多額の損害を被ってしまう可能性があります。そこで宅建業法では営業保証金という、一般消費者が被害を受けた際に、その被害を補填する金銭などを納めないと、そもそも宅建業を営めない仕組みを設けています。
目次
営業保証金制度のしくみと目的
- 制度のねらい
- 不動産の素人(一般消費者)が宅建業者との取引で損害を被った場合、供託された保証金から還付を受けられるようにして、安心して取引できる環境を整える。
- プロ同士(宅建業者間)の取引は自己責任が大きいので対象外。
- 基本の流れ
① 宅建業の免許を取得
② 本店最寄りの供託所へ営業保証金を供託
③ 免許権者(国交大臣または都道府県知事)へ「供託済み」の届出
④ 届出受理後に営業開始
⑤ 損害発生時は相手方が供託所へ請求 → 供託所が還付 - 登場人物
- 宅建業者:保証金を供託する義務主体
- 相手方(一般消費者):損害を補填してもらう受益者
- 供託所(法務局内):保証金を保管し、必要に応じて還付
2. 営業保証金の「供託」三大ポイント
覚える観点 | 詳細 |
---|---|
① 供託額 | 本店:1,000万円 / 支店:1か所500万円 (案内所等は0円) |
② 供託場所 | 本店分も支店分も 本店最寄り の供託所へ一括供託 |
③ 供託物 | – 金銭 – 有価証券(国債=100%評価/地方債・政府保証債=90%/その他=80%) – 金銭+有価証券併用 も可能 |
例題(併用計算)
本店1つ,支店5つの場合の供託額は?
⇒本店(1000万)+支店(500×5=2500万) で3500万円
必要額2,000万円を「地方債証券(額面2,000万円)」で供託 → 評価額1,800万円(90%)
⇒ 現金200万円を追加して合計2,000万円にする。
3. 供託した旨の届出
届出が必要なタイミング | 届出後でないとできないこと |
---|---|
① 開業時 | 宅建業自体の営業開始 |
② 事務所増設時 | 増設した支店での営業開始 |
順序:免許取得 → 供託 → 届出 → 営業。
免許前に供託するのは誤り、届出前に営業するのも誤り。免許取得後、3か月以内に届出をしなければならない。
また供託金が不足した場合、通知が来てから2週間以内に供託しなければならない
4. 供託しない場合の行政措置
- 催告(義務)
- 免許付与日から3か月を過ぎても届出が無いと、免許権者は「届出せよ」と書面で促す。
- 任意的免許取消し
- 催告が届いて1か月以内に届出が無ければ、免許権者は免許を「取消すことができる」。
- 「任意的」なので必ず取消すわけではないが、実務ではほぼ取り消される。
5. 営業保証金の保管替え等(本店移転時のみ)
供託の形態 | 手続き |
---|---|
金銭のみ | 移転前の供託所へ「保管替え請求」→ 供託金を新しい供託所へ移動 |
有価証券を含む場合 | 保管替えは不可。 ① 移転後の供託所に同額を新たに供託 ② その後、移転前の供託所から取戻し |
コメント